佐渡アグリカルチャーシップ

大野機械利用組合発足

昭和43年に新穂大野地域の農家7名で組合を作ったのが始まりだった。

組合を作れば機械をみんなで使えるメリットがあった。

発足してから数年経つと周りのお年寄りや離農していく小作の田んぼも預かり米作りをするようになる。

初めは米だけを育てていたが、次第に野菜の種を採種するなど農業の幅を広げていくことになる。

様々な挑戦を経て今がある。そして今も進化し続けている。

現在では、りんどう、ストックなどの切花、シャインマスカットなど多岐に渡る農作物を栽培している。

そこに至るまでには様々な研究と電卓をたたく日々の積み重ねがある。

トキと暮らすお米づくり

「昭和初期の日本産天然トキは希少になりつつあり近所では見られなくなった。

 珍しくて生息する地域まで見に行った」と創業時からのメンバーで前社長の安田さんが話してくれた。

「今はトキを見ると増えたなと思う。日常にいるから珍しくなくなった」

現在佐渡市には500羽以上のトキが確認されている。

2008年トキの放鳥を開始し、

生息しやすい環境をつくるため地元の農家と佐渡市、農協が一丸となって島全体が減農薬栽培に取り組んできた。

「みんなが努力した結果トキが住める。

 農家だけじゃなくて大学の研究者、島外からのボランティア、農協の会員、市も含めてがんばってきた結果だね。」

と安田さんは話してくれた。

左 前社長の安田さん 右 本田さん

「地域がなくなることが一番だめ。」

佐渡では人口減少が著しい。1965年に10万人であったのが2023年現在では5万人に減少している。

「農地がとても重要。四季がはっきりしているから美味しい作物が作れる。それが働く場所となる。

 佐渡中で自給生活できたらそれが一番だよね。生産者の努力も必要だけど。」

安田さんの佐渡への想いが少し垣間見られた瞬間だった。

その想いはどんなところからくるのだろうととても興味が湧いた。

もちろん佐渡で暮らす人として話してくださるのは分かる。

けど、佐渡での暮らしの中で生まれる佐渡愛はどんな思い出があるのだろうか。

佐渡と共に生きてきた

「昔は自然が残っていた」と安田さんが懐かしむように話してくれた。

「子どもの頃は遊び道具なんてなかった。

 自然の中で生活していたから森の中で空気銃をもって鳥をつかまえたり、木に登って柿を食べたり落っこちたりね。(笑)

 栗の木に登って生の実をかじって蜂に刺されたり。

 朝4時に起こしてもらっておじいさんと大野川にヤマメを釣りに行ったこともある。

 自然に遊んでもらってたなあ。」と安田さんの表情には涙と笑顔が入り混じっていた。

佐渡米には佐渡で暮らしてきた自然への敬意や親しみなど農業に携わる人々の思いが込められている。

安田さんは2009年に代表となり従業員とその家族を守らなければならなかった。

農業は自然が相手であり、離島というハンデも含めてお給料を生み出すために試行錯誤した。

その中で商品としての農作物の品目については模索していた。

野菜や米、果物は春から秋にかけてはいい時期だが冬は仕事がなく、

なんとか冬の仕事がないかと模索している中でポップコーン用とうもろこし(ポップ種)の栽培に光を当てた。

とうもろこしはりんどう栽培を終えた水田で連作が可能。そして加工品にもできる。

そういった経緯からポップコーンが生まれたのである。

佐渡産ポップコーンへの挑戦

始めた頃は全く売れず赤字続きだった。

「5年は売れなくてもうやめたかった。」と語ってくれたのはポップコーンを担当する本田交美さん。

父が創業メンバーの一人で生まれた頃から会社の存在が身近にあった。

学生時代に東京での生活を経て佐渡の素晴らしさを改めて実感し、生きていく場所は佐渡であると20代の頃にUターン。

今では佐渡アグリカルチャー勤続10年、社長の右腕である。

当初、家庭用の鍋でポップコーンを作って直売所で販売してみた。

珍しさもあってかその時はそこそこ売れたので、島外への販売も視野に入れてパッケージを整えてみた。

でも、化学調味料や保存料などを使用していないので賞味期限が短いこともネックになり、

思うように販路を広げることができなかった。

我慢の日々が続いたが地道に続けているうちに少しずつ島内外の方の目に止まるようになり新聞社からも取材を受けるようになった。

そこから本田さんのスイッチが入った。

「せっかく取り上げてもらったチャンスを生かさなければ」とPOPを作ってみたり卸し先を開拓したりと

その時思いつくできることに励んだ。

自分たちの作ったものが売れていく喜びは格別だった。島外へと渡ることも増えてきた。

「栽培する人、加工する人、売る人、みんなの努力が作り出す。佐渡産の商品で佐渡をPRできる絶好のチャンスだと思った。」

ポップコーンの人気の味の一つにのり塩があるが、青のりはご縁のあった高知県産。

コクを出すために佐渡産の昆布を粉末にして加えている。

塩は相川地域で職人手作りの塩釜製法の塩を使用している。ポップコーンに微細な塩が絡むよう粉末にしている。

塩キャラメルポップコーンに使われるバターや生クリームは佐渡乳業のものを使用。食材はほぼ佐渡産。

けれど佐渡で賄うことのできないものは国内で目利きしたもの。オイルは有機ココナッツを使っている。

お客様からはまじりっ気のない味。口どけが良いという感想が送られてくる。

「佐渡産の塩や生クリーム、バターがとても良くて。みんなの美味しいものが集まっているから

 もっともっとポップコーンを通して佐渡をPRしたいですね。」と話してくれた。

ポップコーンを通しての今後の未来

ポップコーンを始めた頃は「なんで佐渡でとうもろこしなの?」という声がちらほら聞こえた。

「ストーリーがないと言われて傷つきましたね。佐渡だからこそポップコーン。これもできるんだと知ってもらいたい。

 ストーリーはこれから作っていけばいい。どんな作物だって長い時間をかけてストーリーができたはず。

 佐渡と言ったらポップコーンも美味しいよねと言われたいですね。売れなかった頃はがんばりが足りなかった。

 売れないのは美味しくないからなのかなと悩んだりしたけど今思えば周知されていなかった。

 売れ始めて気づいたのは宣伝不足だったこと。何もしてなかった自分に腹が立ちましたね。

 どうやって頑張ったらいいのか分からなかったけど、とにかく思いつくことからやり始めました。

 そうやってみんなに知ってもらえたら売り上げにも繋がるんだという自信になった。

 協力し合える会社のみんながいるのが心強いですね。」

と売れない時代を振り返り自信がついた今語れることがある。

本田さんは今後の未来も見据えながらポップコーンづくりに佐渡への想いを託しているようだった。

「スタッフが楽しくなる雰囲気が大事で、売り上げやお客様からいただく感想もスタッフみんなで共有しています。

 取引が決まるとみんなで喜んでくれてモチベーションもあがりますね。」

と社員一丸となってポップコーンにさらなる明るい未来を見据えている。

本田さんのおすすめの食べ方

大野さんのポップコーン(塩バター味)のアレンジ

塩バター味に電子レンジで溶かしたチョコを絡めて乾かしてチョコポップコーンに。甘じょっぱくて美味しい。

袋裏面のレシピで基本の塩味ポップコーンを作って、青のり、カレー、黒コショー、コンソメなどの粉末を絡めば

あっという間にお好みの味付けができます。(温かいうちに絡めるのがポイントです。)

食材ができるまで

5〜6月中旬 とうもろこしの種蒔き

7月~8月   追肥、除草、防除

9月~10月  収穫 

10月~11月  収穫したとうもろこしを2〜3週間完熟乾燥させる

       〈ポップコーンは水分が14%以下でないと弾けないため計測しながら乾燥のタイミングを見計らう〉

11月~    トウモロコシを脱穀したら割れた粒や未熟な粒、虫食いの粒などを手作業で丁寧に取り除き商品になる。

       〈このひと手間をかけることで弾け残りが少なく美味しいポップコーンができるとお客様に喜ばれている〉

大野さんのポップコーンに使用されているポップコーン用とうもろこし(ポップ種)

・バタフライ型 → 塩バター味・のり塩味

・マッシュルーム型 → 塩キャラメル味 

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