佐々木邦基

きっかけは酒造り

佐渡で生まれ、1歳の時に父親の仕事の関係で佐渡を離れて以来ずっと島外で暮らしていた。

田んぼや農業とも全く関係ない生活を送っていたが大きく変える出来事となったのが一本の日本酒と出会ったことだった。

「最高級の産地の酒米を使い、当時屈指の造り手といわれていた杜氏が醸した日本酒の味に心が震えるような感動を覚え、

 日本酒や原料米について調べ、酒造り、米作りを志すようになりました」

縁があって生まれ故郷の佐渡で実家が所有していた田んぼで新規に米つくりを始め、

冬の間に佐渡の酒蔵で蔵人として酒造に携わっている。

農業の形を方向付けた「トキとの共生」

米つくりは当初、美味しい日本酒を造るための原料米作りが最大の目的だった。

そしてもう一つの新しい価値の地平を切り拓いてくれたのがトキとの出会いだった。

米作りを始めたちょうどその頃佐渡では一度絶滅したトキをもう一度佐渡の自然にかえす試みが始まり、

そのための農家の勉強会などに興味をもって参加した。

そこで田んぼのもう一つの価値を学ぶ事となった。

「田んぼはお米だけでなく様々な生きものも生み出し、守る場所であるという事です。

 野生のトキは主に田んぼで生きものを食べて暮らしているため田んぼが生きもの沢山の場所である必要があります。

 美味しいお米と豊かな生きものが両立してはじめて良い田んぼであるとの確信をそこで得る事ができました」と語ってくれた。

今では地元の子どもたちに【佐渡生きもの語り研究所】という一般社団法人を立ち上げ、

田に生息する生きものたちのことを伝える活動もしている。

技術・自然観・哲学を深める「自然栽培」

生きものとの共生は、突き詰めていくと自然と無農薬・無化学肥料栽培栽培へと進むことになる。

しかし技術的な問題が多く、10年以上勉強や試行錯誤を繰り返してもなかなか安定したものにはならなかった。

そんな時に出会ったのが「自然栽培」だった。

「創始者の木村秋則さんが佐渡で行ってくれた講演を聞いて今まで見えなかった世界が目の前に広がるのを感じ、

 すぐに取り組むことを決めました。

 自然の仕組みを理解し、その摂理にのっとり、その力を最大限に生かして農産物を育てる自然栽培は

 今までの苦労や失敗の経験があったからこそ新鮮な衝撃として自分にしみ込んだものと思います」と話してくれた。

「除草機を押して田んぼを歩く」が技術の中心

「自然栽培を構成する技術はたくさんありますが、

 一番の中心は田んぼに生える稲以外の草を抑える除草機で田んぼを歩くことにあります」

と話してくれた佐々木さん。

単に草を抑えるだけでなく田んぼの土の表面で微生物が作った栄養を稲に伝えたり、根っこが元気になる酸素を稲に与えたり、

逆に根っこが嫌がる土中のガスを抜いてくれたりと、3重4重の効果を与えてくれるのだそう。

1週間に1度程度合計4回ほど田んぼを歩く必要があり、6月は毎日どこかの田んぼを歩く日々となる。

毎日が勉強と試行錯誤

佐々木さんの自然栽培とはほったらかしで自然に任せる農法ではなく、

自然から得られる栄養分を最大限に生かす工夫を必要とする農法である。

「常に自然や土、農作物と向き合う必要があります。

 1年間を通して「試行」「観察」「反省」「思考」を繰り返し自分の田んぼに合ったやり方を探究する必要があります。

 そしてそれが自然の摂理とかみ合った時に初めて成果につながります」その点が一番面白いと思うところであると話してくれた。

「正しい自然観と正しい自分の姿勢が必要で、まだまだ完成には至っていませんが少しずつゆっくりと

 自然と調和した米作りに向かっている感覚は持てています。」と真っ直ぐな人柄が伝わってくる。

佐々木さんおすすめの食べ方

個人的にはコシヒカリは冷めた時の方が美味しいと感じるのでおにぎりがおすすめです。

栄養を考えれば玄米や分づき米で。

お相手は王道ですが梅干しや、良い塩が合うと思います。

人にはそれぞれ好みの香り・味・硬さのバランスがありますので、

自分仕様のとぎ方、とぐ回数、微妙な水加減の調節具合を見つけてほしいと思います。

自然栽培米ができるまで

 3月   苗作り準備

 4月   種まき、育苗

 5月   田植え

 6月   除草作業     田の草を抑え、稲を元気にする

 7月   中干し      田んぼの水を抜き、土中に酸素を供給する

 8月   水入れ      干した田にこまめに水を入れ米の実りを促す

 9月   稲刈り、乾燥

 10月  籾すり、出荷

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